鉄骨塗装の種類|錆止め・上塗り塗料の特徴と選び方を解説
コラム 2026.5.12
はじめに
鉄骨塗装は下塗り(錆止め)・中塗り・上塗りの3層構造が基本で、それぞれエポキシ・ウレタン・フッ素などの塗料を用途と環境に応じて選ぶのが正しい手順です。
鉄骨は塗装品質次第で寿命が5年から20年以上まで大きく変わる素材で、塗料選びを間違えると錆の進行で構造強度が低下するリスクがあります。この記事では、鉄骨塗装に用いられる塗料の種類・特徴・耐用年数・選び方を、下塗り・中塗り・上塗りの工程別に整理しました。建物所有者や施工発注担当者が、見積もりの工程表を読み解くうえで必要な基礎知識を網羅しています。
鉄骨塗装の基本構造

鉄骨塗装は、複数の塗料を重ねることで防錆性能と美観を両立させる工法です。一度の塗りで済む一般塗装とは異なり、層ごとの役割を理解することが重要です。
3層塗装が標準である理由
鉄骨塗装では、下塗り(錆止め)・中塗り・上塗りの3層を順に重ねるのが標準です。下塗りは鉄との密着と防錆、中塗りは下塗りと上塗りをつなぐ緩衝層、上塗りは紫外線と風雨から全体を守る最外層という役割分担になります。どれか1層を省略したり、下塗りを薄く塗ったりすると、数年で塗膜が剥がれて鉄骨表面に錆が広がります。
塗装の目的は防錆と意匠の両立
鉄骨塗装の第一目的は、空気中の酸素と水分による腐食(錆)を防ぐことです。加えて、外観の意匠性確保・防火性能・結露防止などの副次的な役割もあります。用途によって重視する要素が変わるため、工場・倉庫では耐候性とコスト、店舗やオフィスビルでは意匠性と耐候性、といったバランスで塗料を選びます。
工場塗装と現場塗装の違い
鉄骨は工場で一次塗装(ショッププライマー・下塗り)を施した状態で搬入されるのが一般的です。現場では輸送中に付いた傷の補修、中塗り、上塗りを行います。工場塗装と現場塗装では環境条件が異なるため、塗料の組み合わせを間違えると層間剥離が起きやすく、相性のチェックが欠かせません。
下塗り塗料の種類と特徴
下塗りは鉄骨塗装の命ともいえる工程で、錆止め性能の9割はこの層で決まります。
エポキシ樹脂系錆止め塗料
現在の鉄骨塗装で最も広く使われる下塗り塗料です。鉄への密着力が非常に高く、上塗りとの相性も良いため、建築鉄骨・鉄塔・橋梁など幅広い用途で採用されています。変性エポキシは浸透性に優れ、旧塗膜の残るメンテナンス塗装でも密着が確保しやすい特徴があります。耐水性・耐薬品性も高く、屋外環境で10年以上の防錆性能を発揮します。
鉛・クロム系錆止め塗料(JIS K 5674 A種)
鉛丹錆止めや亜鉛クロメートなどの伝統的な錆止め塗料で、長年の使用実績がある反面、環境負荷の観点から使用が制限されつつあります。現在は鉛・クロムフリーのA種(屋内外兼用)やB種(屋内専用)への移行が進んでおり、新築物件で鉛系を選ぶケースはほぼなくなりました。既存建物の補修で旧塗膜と合わせる場合に使われることがあります。
ジンクリッチペイント(無機・有機)
亜鉛末を高濃度に含んだ下塗り塗料で、電気化学的に鉄を守る「犠牲防食」の仕組みを持ちます。屋外で強い腐食環境にさらされる海岸部の構造物、煙突、プラント設備などで採用され、20年以上の防錆寿命が期待できます。無機ジンクは乾燥条件がシビアで現場塗装向きではなく、工場塗装で用いられるケースが中心です。
中塗り・上塗り塗料の種類
中塗りと上塗りは、紫外線や風雨から下塗りを守ると同時に、美観を決める工程です。耐用年数は上塗りの選択で大きく変わります。
ウレタン樹脂塗料
コストと耐候性のバランスが良い塗料で、一般的な鉄骨塗装で最も普及しています。耐用年数は8〜10年程度で、戸建ての鉄部や工場・倉庫の塗装で広く使われます。柔軟性が高いため、鉄骨の温度変化による伸縮にも追従しやすく、ひび割れが起きにくいのが特徴です。価格は平米あたり1,800〜2,500円が目安です。
シリコン樹脂塗料
ウレタンより耐候性が高く、耐用年数12〜15年を期待できる塗料です。近年の建築塗装でウレタンに代わって主流になりつつあり、ビル外壁や鉄骨階段・手すりなどで採用が増えています。価格は平米あたり2,500〜3,500円で、コストパフォーマンスが高い塗料として評価されています。
フッ素樹脂塗料
最上位クラスの耐候性を持つ塗料で、耐用年数は15〜20年に及びます。紫外線・酸性雨・塩害に強く、高層ビル・橋梁・海岸部の鉄骨構造物など長期メンテナンスが難しい現場で採用されます。価格は平米あたり4,000〜5,500円と高額ですが、長期的にはメンテナンス頻度が減る分だけ総コストを抑えられます。
無機系塗料
無機成分を多く含むハイブリッド塗料で、フッ素に近い耐候性(15〜25年)と、低汚染性を両立しています。チョーキング(白化)しにくく、汚れが雨で流れ落ちるセルフクリーニング効果を持つ製品もあります。新築物件やリニューアル工事で、メンテナンスサイクルを長くしたい場合に選ばれます。
用途・環境別の塗料選び
鉄骨塗装は、設置環境と用途に合わせて塗料を組み合わせる必要があります。
一般建築(ビル・商業施設)
ビルや商業施設の鉄骨は、美観と耐候性の両立が求められます。エポキシ系下塗り+シリコンまたはフッ素系上塗りの組み合わせが定番で、耐用年数12〜20年を確保できます。大規模修繕のタイミングに合わせて塗り替える前提で、周期と費用のバランスを決めます。
工場・倉庫
工場や倉庫では、コストと作業効率が優先されるため、エポキシ系下塗り+ウレタン系上塗りが主流です。耐用年数は8〜10年ですが、塗装面積が大きいため総額が抑えられる組み合わせとして合理的です。操業停止を最小限にするため、速乾タイプの塗料が選ばれることもあります。
海岸部・塩害地域
海岸部や温泉地など塩害や腐食性ガスが強い環境では、ジンクリッチペイントの下塗り+エポキシ中塗り+フッ素または無機系上塗りの重防食仕様が採用されます。一般塗装の2倍前後のコストがかかりますが、錆の進行を最小化できるため長期的な構造維持には不可欠です。
鉄骨階段・手すりなどの鉄部
既存建物の鉄骨階段・手すり・ベランダ鉄部は、劣化の進行度合いに応じて塗料を選びます。錆が出始めている場合は錆止めを入念に施し、ウレタンやシリコン系で仕上げるのが一般的です。部分的に錆を削り落としたあとで塗り替える「素地調整」の品質が、塗膜寿命を大きく左右します。
塗装工程と品質管理のポイント

塗料選びと同じくらい重要なのが、施工工程の管理です。どれだけ高性能な塗料でも、下地処理や塗布量を誤れば性能は発揮されません。
素地調整(ケレン作業)
塗装前に鉄骨表面の錆・旧塗膜・汚れを除去する工程です。ケレンは4段階に分類され、1種ケレン(完全除去)から4種ケレン(表面清掃程度)まで選択します。新築の工場塗装では2種〜3種、既存建物のメンテナンスでは3種〜4種が一般的です。ケレンの精度が塗装全体の寿命を決めます。
塗布量と膜厚管理
メーカーが指定する塗布量(1平米あたりの使用量)と乾燥膜厚を守ることが、塗膜性能の基本です。塗料を薄めすぎたり、乾燥時間を短縮したりすると、本来の耐候性が発揮されません。膜厚計での測定・記録がある業者を選ぶことが、品質確保の目安になります。
気象条件と乾燥時間
塗装は気温5℃以下・湿度85%以上では原則として行えません。これを守らないと塗膜の乾燥不良や結露による白化が発生します。工期を優先して悪天候下で塗装を強行する業者は避けるべきで、工程管理表で天候と作業内容の整合性を確認することが大切です。
まとめ
鉄骨塗装は、下塗り・中塗り・上塗りの3層それぞれで適切な塗料を選ぶことで、長期的な防錆と美観が両立できます。下塗りはエポキシ系が主流で、上塗りはウレタン・シリコン・フッ素・無機系から用途と予算に応じて選択します。環境条件・耐用年数・コストのバランスを見極め、施工時の素地調整と膜厚管理まで目を配ることが、失敗しない鉄骨塗装の要点です。見積もりを受けるときは、塗料メーカー名と製品名・塗布量・工程数を必ず確認してください。
鉄骨塗装のご相談はユニースへ
鉄骨塗装は塗料選定と工程管理の巧拙で寿命が数倍変わる繊細な工事ですが、高所での作業が多いため、足場費用が工事総額を押し上げる要因にもなっています。株式会社ユニースでは、ロープアクセス技術を活用した無足場工法で、ビル外壁や鉄骨階段・手すりの塗装を施工しています。建築施工管理技士の資格を持つ技術者が現地調査から塗料選定・施工・品質管理・報告書作成までワンストップで対応するため、発注者様の負担を最小限に抑えられます。足場を組めない狭小地や短工期が求められる現場でも、ロープアクセスなら作業を進められます。塗装仕様の選定から相談できますので、鉄骨の劣化や塗り替え時期でお悩みの方はぜひお問い合わせください。